日本の誇り、製造業が人手不足です。日本品質ブランドを守ろう
「今後自分の会社はどうなるだろう?」と心配になっている製造業に従事されている方のための記事です。
大学まで出てものづくりに携わってみたけど、日本のものづくりのブランドが下がってきているというニュースを見ると心配。
日本の製造業のブランドは、徐々に落ちているのは事実です。
これらは、日本のブランドを支え続けてきた町工場、中小企業の人手不足が大きな原因の一つです。
時代の変化、進歩に従って、製造業に従事する人が減っています。
もしかしたら大企業にいると感じづらい(応募者が多いので)かもしれませんが、中小企業にとっては人手不足がかなり深刻です。
どれくらい深刻かというと
社長はもうそろそろ引退しなきゃいけないのに、後任が決まっていないから、会社そのものが無くなるかもしれない
とか
営業は優秀で仕事を取れるのに、実際の製造が追いつかないから会社の利益が出せない
とか
製造部の人員が足りないから、事務職やら清掃員まで導入して人手不足を補っている
なんて事が実際にあります。
こうなると見える未来は、「日本から優秀な技術者がいなくなる」という未来です。
そうですよね、一般的に現場で働く人の方がお給料が安いです。
しかし現場の人手が足りないから、オフィスワーカーも現場仕事をします。
結果、製造原価を守るために全員の給料を下げざるを得ない。
製造業の未来が暗く見えてきて怖いので、同じく製造業を担う若手中堅の一人として、現状と未来予測をデータから読み、対策まで考えられたらいいなと思います。
データから見る製造業の人手不足の現状
参考:中小企業庁より、「中小企業の雇用環境と人手不足の現状」のpdfファイル(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap3_web.pdf)
参考文献によると、製造業の中小企業への毎年の就業者数の減りは緩やかに見えます。
しかし、従業員数過不足DIという、人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたものを見ると、「不足」と答えている会社の方が多いことが分かります。
このデータから、人員が一か所に集まっていそうだという事実が見えます。
有名な会社、広告を打てる余力のある会社は人材確保ができて良そうだけど、そうではない会社にとっては人材不足が激しそうだなーということが予想できますよね。
経産省の「製造業における外国人材受け入れに向けた説明会」資料(https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180712005/20180712005-2.pdf)によると、「技能人材」が圧倒的に不足していることがわかります。
以上を総合すると、人材確保に苦労している会社は、「技能人材」の確保に特に困っていそうだということがわかります。
製造業の人手不足の未来予想
前章を見ると現状では、「人手不足」は中小企業がメインの課題のように見えます。
しかし中小企業の人手不足は、大企業にも大きな影響を及ぼします。
たとえば2020年10月末に発生したトヨタのリコール(https://toyota.jp/recall/2020/1028.html)では、「すでに成熟し切った技術部品」で重大な欠陥が見つかっています。
納入元は下請けのデンソーですが、制作しているのはさらに下請け、つまり中小企業です。
- 中小企業の人手不足
- 部品発注先を複数準備しないと供給が追い付かない
- 品質保証が追い付かない
- 検査が万全でなく、大企業の責任としてリコール(大損失)
「作った下請けが悪いじゃん」は大企業の言い分ですが、中小企業からすると提案も許されず、「決まった通りに製作し続けてください」というのが事実だったりするので、最終的には発注元の大企業がすべて面倒見るべきなんですよね。
提案した内容を「前例がない」「上司が認めない」で蹴られることもあります。
中小企業の人手不足が無ければ、生産能力も安定して、一社の面倒を見るだけでよかった。
しかし人手不足のため複数社に依頼せざるを得ない。
すると品質がばらつき、評価は一番下の下請けのレベルに見合ったものになります。
日本のものづくりへの信頼は、人手不足が起因して落ちていくんじゃないかなと心配しています。
なぜ、製造業では人手不足になっているのか
実は製造業だけでなく、各業界とも人手は不足しています。
これは少子化の影響です。
とりわけ製造業の人手不足が大きな話題になっている理由は、製造業が日本の基幹産業だからです。
トヨタに代表される自動車をはじめとした製造業が、日本の雇用を長年守り続けてきましたが、そろそろ時代も限界を迎えそうです。
かつては製造業が一番お金を稼ぎやすい産業でした。
大学では工学部が人気で、たくさんの人がものづくりにあこがれ、勉強しました。
現在は時代も変わり、そもそも「お金を稼ぎたい」という感覚も減ってきました。
お金を使わなくても人生が楽しいし、趣味もお金を必要としないものが増えてきました。
さらに現在はプログラマー、YouTuber、イラストレーターなどのパソコンを使いながら、綺麗な職場で働く方が人気です。
「好きなことで生きていく」というキャッチコピーが人気になったように、3K(汚い、危険、キツイ)を我慢して無理やり給料を貰うモデルも崩壊しました。
海外の製造業の人ではどうなっているか
私は現在中国のメーカーで働いていますが、ここも日本と同じ悩みを持っています。
またオフィスワーカーも入れ替わりが激しく、社内で技術を熟成できずにいます。
▼先日、こんなツイートをしました。
製造現場で仕事をする人が減ったらしく、中国では?弊社だけ?人材確保がひとつの課題のようです。
・親が可愛い1人の子供を工場で働かせたくない
・きけん、汚い、キツいの3Kに、給料が安い
・最近はみんな上海に行きたいみたいな感じ?
ものづくりの次は何が来るかな、中国の事例も観察してみます— TOMO🤐文化の壁と格闘中 (@try_to921mo) December 30, 2020
親が可愛い一人っ子を工場で働かせたくない
3Kなのに給料が安い
広東より上海で働きたい
というのがあるらしいと、会社の人が言ってました。
ちょっと深掘りします。
親が可愛い一人っ子を工場で働かせたくない
中国は一人っ子政策があったので、子供が可愛いです。
危険な工場よりきれいなオフィスで働いてほしいのが親心。
昔は農村から成上るために工場に入り、そこから昇進して偉くなるみたいな感じでしたが、今は他の選択肢もあるのでそもそも工場という選択肢がないみたいです。
3Kなのに給料が安い
給料が多くもらえるから3Kでも我慢できますが、少ないなら他のより良い選択肢を選びますよね。
若者は製造現場に就職するよりもデリバリーの配達員や運転手をした方がきつくないし、お金も稼げるということで工場離れしています。
他にも网红と呼ばれるインフルエンサービジネスも人気だし、工場以外の働き方の方が可能性が多いようです。
広東より上海で働きたい
これは私の勤めている会社が広東にあるから、こういう結論になっただけかもしれないですが、「みんなやっぱり都会に行きたい」という気持ちが強いようです。
日本だと地方の人が「東京に出たい」と思うのと同じ感覚なのかもしれませんね。
製造業の人手不足の解消
私も将来の製造業を担う中堅の一人なので、自分が生き残るうえでも、人手不足の解消方法を考えておかないといけません。
- 自動化設備に切り替える
- 高利益モデルへの転換
- 外国人を積極的に採用する
- 異業種への挑戦
- 労働環境の改善
ぱっと思いつくだけで5つありました。
自動化設備に切り替える
大企業は積極的にラインを自動化したりしていますが、今後はそもそもライン生産が減っていく(多品種少量生産)と言われているので、(2016年版ものづくり白書:経済産業省https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/topics/pdf/160610_4.pdf)、今やるべきじゃないのかな、と思います。
それよりはホワイトカラーの無駄を減らして仕事が早く流れるようにしていく「働き方改革」の方が優先度高いと思います。
高利益モデルへの転換
量産をメインでやっている会社は試作品にシフトしていくとか、高単価商品をメインで扱うようにするとか、「他社にない強み」を武器に戦っていくと、人手不足は逆に「技術の水準」となり、給料と仕事の辛さ、やりがいのバランスが取れるんじゃないかなと、思います。
外国人を積極的に採用する
私は中国人と一緒に仕事できればなーと思って中国語を勉強しましたが、すでに中国は製造業離れをしているので、また別の国の人を探すのが良いのかなーとも思います。
しかし日本の製造業に興味を持って外国人が来てくれる望みもすでに薄いので、どちらかというと優秀な技術者を呼んでくる形に落ち着くと思います。
異業種への挑戦
「迷走している」と言われかねない方向転換ですが、やらないとどのみち会社が無くなります。
ものづくり業界は「企業秘密」が多くネットに全然技術情報が出てこないので、この穴を突いて情報発信するのは面白そうだな、と思っています。
将来的には技術情報を出したり、本を出したり、YouTubeライブで展示会の取材をしたいなーと思っています。
労働環境の改善
工場って昭和時代からずっとあるので古臭いですよね、頑丈さだけが取り柄なので全然建て替えられないですが、工場に断熱材を入れたり、オフィスをきれいにしたり、休憩所をリフレッシュの場にできたりしたらいいなと思っています。
どうでもいいところからくる仕事のストレスは、ゼロにして初めて他業種とも戦えるので、今のうちに考えを巡らせています。